2011年3月11日14時46分、ろくろは止まり、窯の火も消えました。止まった時計は今も14時47分を指し、訪れた人は足を止め、自身の記憶と重ねながら“時間の重さ”を体感します。
時が止まったかのような館内の景色は、震災の生々しさを改めて突き付ける装置でもあります。
破片も埃もそのまま残し、匂い・湿度・足跡まで保存することで、写真や映像では届かない五感の記憶へつなげます。こうして守られた空気が、当時の緊張感を今に呼び戻します。
館内外の惨状は、揺れの影響によってもたらされたものではありません。震災後の立入制限期間、割れた窓と壊れた扉からイノシシやサルが自由に出入りし、店内を荒らしてゆきました。
人の手が入らなくなると、敷地はすぐに雑草で覆われ、壁や基礎のすき間からは小さな木が伸び始めます。雨水の排水が滞ることで木部は腐り、金属は錆び、ガラスは割れたまま放置されるため、建物全体の劣化が加速します。
建物というものは、人の営みが途絶えるだけで、数年のうちに利用前とはまったく違う荒廃した姿へと変わってしまいます。